通院前チェックをしてみる

休職するとき

HIV感染症に限らず、何らかの病気の治療で休職することがあるかもしれません。ここでは、その場合に利用できる支援制度をご紹介します。

このような支援制度が
利用できるかもしれません

傷病手当金

病気やけがの療養で仕事を休み、十分な給与が得られない時、公的医療保険(※)から支給されます。連続する3日間を休み、4日目から支給を受けることができます。支給期間は、支給開始日から通算して1年6カ月です。
※国民健康保険と後期高齢者医療制度では任意給付となっているため、給付の有無については加入している公的医療保険にご確認ください。
申請書類には、「本人記載欄」「医師記載欄」「事業所(職場)記載欄」とあります。ほとんどの事業所(職場)では、手続きの手順として、医師記載の上で事業所(職場)担当者に提出することになってます。事業所(職場)担当者が目にすることになりますので、医師記載欄については、休業が必要な病名の記載は必要ですが、「HIV」について記載するのかどうか、医師と事前に相談をしましょう。
健康保険に一年以上加入している場合には、傷病手当金を受給しながら退職した際には、退職後も一定期間は傷病手当金を継続して受給することが可能です。退職日に勤務していないことなどの要件がありますので、詳しくは健康保険組合にお問い合わせいただくか、医療ソーシャルワーカーにご相談ください。

高額療養費制度

医療機関を受診したときにかかる診療費や治療費、調剤薬局などで処方される薬剤費として支払った医療費の負担(月額)が高額になったとき、その経済的負担を軽くするために設けられた制度です。高額療養費制度を利用すると、1ヵ月(その月の1日から月末まで)の医療費について、決められた上限金額(自己負担限度額)を超えた自己負担額は医療費の給付を受けることができます。また、医療費が高額になることが事前にわかっている場合は、加入している公的な医療保険から「限度額適用認定証」の交付を受けておき、医療機関等の窓口に提示することで、窓口での支払い額を自己負担限度額の範囲に抑えることができます。

付加給付

加入している公的医療保険が健康保険組合の場合は、組合独自の付加給付を支給する制度を設けている場合があります。給付の有無や金額、手続きは健康保険組合によって異なります。詳しくは加入している健康保険組合へお問い合わせください。健康保険組合のホームページに詳細が記載されている場合もあります。

身体障害者手帳

視覚障害、肢体不自由など、体のどの部分がどうであれば身体障害として認定するのか、様々な認定基準があります。HIV感染症については、「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能障害」として、免疫機能の障害が一定以上の場合、身体障害者手帳(ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能障害)が交付されます。HIV感染症で身体障害者手帳を申請する場合、診断書に、4週間以上の間隔をあけて実施した連続2回の検査結果の数値を記載する必要があります。身体障害者手帳が交付されると、このページでご紹介する自立支援医療(更生医療・免疫)の対象となり、 HIV感染症治療費の負担が軽減されます。また、障害福祉サービスなどを利用できます。身体障害者手帳を取得したことは会社に告知をする義務はありません。家族に知られずに手続きをすることも可能です。詳しくは医療ソーシャルワーカーにご相談ください。通院先の医療機関に医療ソーシャルワーカーがいない場合には、全国にある「ブロック拠点病院」の医療ソーシャルワーカーにご相談いただくことが可能です。

自立支援医療(更生医療・免疫)

身体障害者手帳(ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能障害)を交付されている方が、免疫機能障害に基づく症状を除去・軽減するためのHIV感染症治療を受ける場合、市区町村が実施する自立支援医療(更生医療・免疫)の対象となり、医療費の月額自己負担が軽減されます。月額自己負担は0円~20,000円に軽減されます。

重度心身障害者医療費助成制度 (自治体によって名称が異なる場合があります)

身体障害者手帳を交付された方で受給要件を満たした場合に、医療費の自己負担額の一部か全額が助成される制度です。お住まいの地域によって、対象となる障害の程度や所得制限、自己負担額は異なります。詳しくは自治体の担当窓口へお問い合わせください。健康保険に付加給付制度がある場合には、重度心身障害者医療費助成制度の利用について申告を求められることがあります。健康保険組合にお問い合わせください。健康保険組合とのやり取りに不安を感じる場合には、医療ソーシャルワーカーにご相談ください。通院先の医療機関に医療ソーシャルワーカーがいない場合には、全国にある「ブロック拠点病院」の医療ソーシャルワーカーにご相談いただくことが可能です。

医療費控除、障害者控除

1~12月に支払った医療費が一定額を超えた場合、その金額をもとに計算された額が所得控除の対象となり、所得税が軽減される制度です。また、身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている方は、障害者控除を受けることができ、所得税や住民税、相続税などが軽減されます。

公的保険制度を利用して治療を受けても、本人の同意なく個人情報が第三者に知られることはありません。

上記の支援制度のお問い合わせ先

制度 主なお問い合わせ先
(自治体によって異なる場合があります)
傷病手当金 加入している公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽなど)
高額療養費制度 加入している公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)
付加給付 加入している公的医療保険(健康保険組合)
身体障害者手帳 お住まいの市区町村の担当窓口(「障害福祉課」などの名称が多いです。)
自立支援医療(更生医療・免疫) お住まいの市区町村の担当窓口
重度心身障害者医療費助成制度 お住まいの市区町村の担当窓口(身体障害者手帳の担当窓口とは異なる場合があります。)
医療費控除、障害者控除(所得税、相続税) お住まいの地域を管轄する各国税局の電話相談センター
障害者控除(住民税) お住まいの市区町村の担当窓口

さらに支援制度について詳しく知りたい方は主治医や医療機関のソーシャルワーカーにご相談ください。その他に治療に関する悩みや体調について主治医に相談したいことはありませんか? 通院時に相談したいことをまとめるために、簡単なチェックリストであなたが抱えている悩みや、心身の状態などを整理できる「対話を深める通院前チェック」を活用してみましょう。

厚生労働省「傷病手当金について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000688661.pdf (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/ (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ (平成30年8月診療分から)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

厚生労働省「健康保険法(健康保険組合の付加給付)」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84024000&dataType=0 (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

厚生労働省「障害者手帳」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

厚生労働省「身体障害者障害程度等級表の解説(身体障害認定基準)について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000615256.pdf (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

厚生労働省「自立支援医療(更生医療)の概要」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/kousei.html (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

中四国エイズセンター「重度心身障害者医療費補助制度(福祉医療)について」
https://www.aids-chushi.or.jp/shakai_fukushi/02/2.html (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

国税庁「障害者と税」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/03_2.htm (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

このページの内容は2024年7月時点のものです。今後、制度が改正される可能性があります。
支援制度を利用される際には、公的機関の担当者や主治医、医療機関のソーシャルワーカーなどの医療関係者にご相談ください。

岡本 学 さん

ご監修
国立病院機構 大阪医療センター
HIV/AIDS先端医療開発センター HIV地域医療支援室 ソーシャルワーカー
岡本 学 さん