通院前チェックをしてみる

血液凝固因子製剤の投与による感染被害の場合

血液凝固因子製剤の投与によりHIVに感染した方には、HIV感染症治療にかかる医療費を助成する仕組みのほか、健康管理にかかる費用を軽減する制度が用意されています。また、血液凝固因子製剤の投与によるC型肝炎ウイルスに感染した方に係る調査研究事業も実施されています。

このような支援制度が
利用できるかもしれません

特定疾病(高額長期疾病)療養費

健康保険の高額療養費制度の一種です。長期にわたり高額な治療を必要とする疾患の医療費の月額自己負担上限を軽減する仕組みです。血友病A・B、透析を必要とする慢性腎不全、そして、薬害(2次感染、3次感染を含む)によるHIV感染が対象になっています。HIVについては、あくまで「薬害」に限定されています。健康保険組合の案内によっては、「薬害」についての記載が漏れている場合がありますが、申請には「薬害」だと証明できる書類の添付が必須です。感染経路が異なる場合には、対象にはなりませんので、ご注意ください。血友病A・Bと薬害(2次感染、3次感染を含む)によるHIV感染については、所得に関わらず、月額自己負担上限が10,000円となります。また、この10,000円の自己負担分は、このページでご紹介している「先天性血液凝固因子障害等治療研究事業」による助成を受けることができます。

先天性血液凝固因子障害等治療研究事業

先天性血液凝固因子欠乏症と、血液凝固因子製剤の投与によるHIV感染症の方を対象とした事業で、その病気の治療にかかる費用の自己負担分を全額助成します。介護保険の訪問看護や訪問リハビリテーションなどの費用の自己負担分も対象になります。都道府県によっては、医療機関・薬局を事前登録することが必要です。

「血液凝固因子製剤に起因するHIV感染症患者については、先天性血液凝固因子欠乏症およびHIV感染症に付随して様々な傷病が発現しうることから、その診療にかかる医療費の自己負担分は本事業の対象として取り扱って差し支えありません。」と令和元年6月に厚生労働省より通知がされており、保険診療については病名にかかわらず該当すると理解して差し支えありません。

血液凝固因子製剤の投与によるHIV感染被害救済制度(調査研究事業・健康管理支援事業)

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)が公益財団法人友愛福祉財団の委託を受けて、血液凝固因子製剤の投与によるHIV感染症の方を対象に行っている事業です。調査研究事業では、血液凝固因子製剤の投与によりHIVに感染した方または二次・三次感染者のうちエイズを発症していない方に健康管理費用を支給します。健康管理支援事業では、血液凝固因子製剤の投与によりHIVに感染しエイズを発症した方のうち、裁判で和解が成立した方に発症者健康管理手当を支給します。

先天性の傷病治療によるC型肝炎患者に係るQOL向上等のための調査研究事業

PMDAが血液凝固因子製剤の投与によりC型肝炎ウイルスに感染した方を対象に行っている調査研究事業です。先天性の血液凝固因子異常症であり、血液凝固因子製剤の投与により感染したC型肝炎ウイルスで慢性肝炎を発症した後に、肝硬変や肝がんに進行したり肝移植を行ったりした方が対象です。この事業では、生活状況の調査や医療・福祉サービスの利用状況など日常生活の調査を行っており、対象者に調査研究協力謝金を支払っています。

上記の支援制度のお問い合わせ先

制度 主なお問い合わせ先
(自治体によって異なる場合があります)
特定疾病(高額長期疾患)療養費 加入している公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)
先天性血液凝固因子障害等治療研究事業 お住まいの都道府県の担当窓口
血液凝固因子製剤の投与によるHIV感染被害救済制度 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)
先天性の傷病治療によるC型肝炎患者に係るQOL向上等のための調査研究事業 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)

さらに支援制度について詳しく知りたい方は主治医や医療機関のソーシャルワーカーにご相談ください。その他に治療に関する悩みや体調について主治医に相談したいことはありませんか? 通院時に相談したいことをまとめるために、簡単なチェックリストであなたが抱えている悩みや、心身の状態などを整理できる「対話を深める通院前チェック」を活用してみましょう。

医療・介護 高額ガイド(令和5年4月版). 東京: 社会保険研究所; 2023. 142-143.

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「HIV感染者、エイズ発症者に対する健康管理費用等の受託給付業務」
https://www.pmda.go.jp/relief-services/hiv-positives/0002.html (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

厚生労働省「血友病薬害被害者手帳」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/topics/dl/tp160302-01_1.pdf (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「2024年度先天性の傷病治療によるC型肝炎患者に係るQOL向上等のための調査研究事業」
https://www.pmda.go.jp/relief-services/health-welfare/0006.html (2024-07-05 時点の情報を基に作成)

このページの内容は2024年7月時点のものです。今後、制度が改正される可能性があります。
支援制度を利用される際には、公的機関の担当者や主治医、医療機関のソーシャルワーカーなどの医療関係者にご相談ください。

岡本 学 さん

ご監修
国立病院機構 大阪医療センター
HIV/AIDS先端医療開発センター HIV地域医療支援室 ソーシャルワーカー
岡本 学 さん