通院前チェックをしてみる

いま主流の
HIV治療とは?

「HIV治療のいま」を知ることで、
「自分らしい生き方」が見えてくる。
医療の進歩と共に増えた治療の選択肢から、
あなたに合った方法を探してみましょう。

HIV 治療の歴史

HIV治療の幕開け

1980年代に原因不明の感染症として突如広まったエイズは、その致死性から「謎の死の病」として恐れられました。1983年、エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)が発見されました1)。さらに1987年、最初の抗HIV薬が誕生1)。ここから、本格的なHIV治療の歴史がはじまりました。

進化するHIV治療

1990年代初めのHIV治療では1日3~5回、合計約20錠もの服用が必要なため、身体的にも金銭的にも大きな負担となることが課題でした。1990年代半ばには、複数(多くの場合は3剤)の抗HIV薬を用いる「多剤併用療法(HAART)」が登場し、劇的な転換期を迎えます。こうした医療の進歩により、HIVに感染していても長期生存が期待できる時代に移り変わり2)治療時の負担も以前よりは軽くなりました3)

今日では、HIVは「慢性疾患」として捉えられ、感染前とほぼ同じような生活を送れるようになっています4)。2015年、食事の有無にかかわらず1日1回1錠の服用で済む抗HIV薬の登場5)を皮切りに、「シングルタブレットレジメン(STR)」と呼ばれる治療法が主流になり6)、さらに少ない負担で治療を続けられるようになりました3)

経口薬による薬物治療は2種類

代表的な経口薬によるHIVの薬物治療として、「マルチタブレットレジメン(MTR)」と「シングルタブレットレジメン(STR)」の2つが挙げられます。

マルチタブレットレジメン(MTR)

「MTR」は、1日1回複数の錠剤を服用する治療法です。ウイルス抑制効果を高める役割を持つ「バックボーン」と呼ばれる薬剤を2剤、HIVを抑制する効果が強い「キードラッグ」と呼ばれる薬剤を1剤、これが基本の組み合わせです。

シングルタブレットレジメン(STR)

「STR」は、「バックボーン」と「キードラッグ」を推奨される組み合わせで1錠にまとめた薬を服用する治療法です。自分で決めた時間に、1日1回1錠を服用するだけで済むため、「MTR」よりも飲み忘れをしにくく、服用時の負担も軽減できるメリットがあります。さらに、今日では副作用をかなり抑えた薬も登場しています3)

これまで見てきた2つの経口薬による薬物治療の中でも、現代の主流は「シングルタブレットレジメン(STR)」です。新規HIV陽性者を中心に、多くの患者に用いられています6)

自分らしい生き方を叶える

HIV治療の選択肢は、医療の進歩と共に増えてきました。また現在では、適切な治療を行うことで、非感染者と同じくらいの寿命も望めます7)

これからも自分らしい人生を送るために、いま一度、主治医との対話を見直してみませんか。あなたにとって適切な治療法が、今後もずっと変わらないとは限りません。体調の変化や薬の飲み忘れ、日常生活における不安まで、どんなに些細なことでもまずは主治医に相談してみましょう。

本サイトでは、その一歩を踏み出す際に役立つツールとして、「対話を深める通院前チェック」をご用意しています。ぜひ、次回の主治医とのコミュニケーションにご活用ください。

1) 照屋勝治,HIV治療の最前線,日本内科学会雑誌, 2013, 102, 12, p. 3244 – 3245.

2) 渡邊大, 日本におけるHIV診療の現状と課題, 保健医療科学, 2023, 72, 2, p. 90 – 91.

3) 今村顕史, 感染症の診断と治療, 予防―最近の進歩―, 日本内科学会雑誌, 2013, 102, 11, p. 2817.

4) 今村顕史, 感染症の診断と治療, 予防―最近の進歩―, 日本内科学会雑誌, 2013, 102, 11, p. 2816.

5) 渡邊大, 日本におけるHIV診療の現状と課題, 保健医療科学, 2023, 72, 2, p. 92 – 93.

6) 令和5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金エイズ対策政策研究事業 HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究班『抗HIV治療ガイドライン』2024年3月発行, p. 28 – 29図V-2

7) The Antiretroviral Therapy Cohort Collaboration, Survival of HIV-positive patients starting antiretroviral therapy between 1996 and 2013: a collaborative analysis of cohort studies, Lancet HIV, 2017, 4, 8, p. e350.