HIVと糖尿病のリスク
HIVや一部のHIV治療薬が、
糖尿病の発症リスクを高める場合が
あります。
予防や発症を遅らせる方法を
把握しておきましょう。
糖尿病について
糖尿病には、発症原因がいまだ明らかになっていない「1型糖尿病」 (全体の約6%) と、食事や運動などの生活習慣が発症に大きく影響する「2型糖尿病」 (全体の約94%) の2種類があります*。
2型糖尿病になると、血糖値をコントロールするインスリンが肝臓で十分に作られなくなり、健康に重大な影響を及ぼす合併症が引き起こされるため、適切な管理が必要です。
2型糖尿病の発症には、主に次の2つの要因が影響します。
- 家族歴、遺伝的な要因
- 不健康な食生活や運動不足などの生活習慣
2型糖尿病の半数以上は、生活習慣を改善することで、発症を予防したり、進展を遅らせたりできると考えられています。
*西村理明. The Lipid. 2019;30: 260-266.を参考に作成
糖尿病のリスクの評価
発症の危険性は、次のような方法で評価されます。
- 食事や生活習慣の確認
- 体重と身長に基づく体格指数 (BMI;Body Mass Index) の算出
- 糖尿病の家族歴の確認
- 年齢や遺伝的要素の確認
- 血圧測定
- 定期的な血液検査による血糖値の測定
- HIV治療薬を含めた服用中の薬の見直し
肥満が及ぼす影響
肥満や大きな腹囲は、2型糖尿病のリスクを高めます。健康的な食生活を送って運動をすることで太り過ぎを改善し、糖尿病リスクを減らすことができます。
HIVと糖尿病との関係
HIVへの感染が及ぼす影響
HIV感染が長期にわたるHIV陽性者は、非陽性者と比べて2型糖尿病の発症リスクが高くなります。
中にはC型肝炎ウイルスに感染するリスクが高い人もいます。もしC型肝炎ウイルスに感染すると、HIV治療とC型肝炎がともにインスリンの作用に影響を及ぼし、糖尿病の発症につながる場合もあるため、注意が必要です。
また、米国の調査では、HIV陽性者は、肥満がない若年層において糖尿病の有病率が高くなる可能性が指摘されています*。
* Hernandez-Romieu AC, et al. BMJ Open Diabetes Res Care. 2017; 5: e000304.を参考に作成
HIVの治療が及ぼす影響
HIV治療薬の中には、糖尿病の発症リスクを高めるものがあります。
まず、自分が受けている治療が最適かどうかを知ることが大切です。治療薬の選択肢について主治医に相談してみましょう。
2型糖尿病と診断された場合
糖尿病とHIVをともに良好に管理するため、次のようなことが推奨されます。
- 健康的で栄養バランスに富んだ食事の摂取
- 身体活動の増加
- 定期的な血糖値測定
また、主治医はさらに次のことも考慮します。
- 複数のHIV治療薬の相互作用
- 定期検診の追加
不安な点や質問があれば、主治医に尋ねてください。糖尿病管理アプリなどを活用するのも良いでしょう。